お子様の歯とともに大事な事
「乳歯がなかなか抜けないんです」「他のお友達は乳歯が抜けているのに、うちの子はまだ抜けないので抜いてください」
私たち歯科医にとっては、一年中耳にする言葉です。一般的に乳歯の生えかわりは、早いお子様で5才くらいから始まります。もちろん7~8歳ぐらいからのお子様もおられます。生え変わりの時期というのは、お子様の身体の大きさと同じく「個人差」があります。
乳歯は抜ける時は永久歯の萌出に伴う根の吸収により、歯がぐらついてきます。永久歯の萌出が見られない場合はたいてい歯は動きません。それに、乳歯の根の吸収が無く永久歯がひっかかって放出を妨げる場合もあります。わかりやすく言えば、永久歯の生える準備が整っていないということです。
逆に、むし歯を放置したままや、むし歯で神経を抜いたり、外傷による歯の脱臼などで、生えかわりが極端に早くなる場合もあります。乳歯が早期に抜けたり、安易に抜歯すると、お子様のあごのスペースが不足して永久歯が並びきれずに歯列不正がおこります。
もちろん、抜かないといけない乳歯もあります。永久歯が放出困難と判断されたときや、歯の破折などです。早期に抜歯処置を行う場合は、抜歯した両側の歯が寄ってこないような処置も必要になってきます。
最近では、昔に比べ食生活や生活環境が良くなり、お子様の成長や歯の生え変わりが早くなってきています。それに加え保護者の方の歯に対する意識が高くなっているのも事実です。
しかし、むし歯の数が減ってきたのと反比例するかのように、あごの成長不足のお子様が増加傾向にあります。成長や歯の生え変わりが早くなっても、基本的に人間の構造は変わっていません。歯みがきももちろん大事ですが、規則正しい生活、食生活なども歯にはとても重要なことです。歯は身体の一部です。生活が乱れると歯も乱れてきます。お子様の歯と共に生活環境にも注意を払って見守ってあげてください
歯の抜ける時期、永久歯の生える時期
子どもの歯肉の着色
近ころでは幼稚園や小学校へ検診に行っても、以前のような重度のむし歯のお子様はあまり見かけなくなりました。歯みがき習慣が定着し、フッ素の使用が普及したこともあってむし歯が減った一方で気になることがあります。歯肉です。「白い歯にピンクの歯肉」これはお口の健康を表すゴールデンコンビです。
身近にいらっしゃるお子さまの歯肉はきれいなピンク色ですか? それは歯肉の『メラノサイトーシス』と呼ばれるものかもしれません。メラノサイトーシスとは、一般的には皮膚のやや深いところに色素細胞が存在している状態をいい、多くは左右対称に現れます。
歯肉のメラノサイトーシスは、歯肉のメラニン色素沈着症で、いわゆる『シミ』ですが、受動喫煙を受けている子供たちによく見られ、近年問題になってきています。受動喫煙により全身に疾患が生じることは最近ではよく知られてきました。本人がタバコを吸わなくとも、周囲に喫煙者がいれば、前歯部の歯肉は開口時にはタバコ煙にさらされます。
タバコ煙にはPM2.5をはじめ多くの物質に含まれるため、これらによって歯肉が影響を受けると考えられて居ます。受動喫煙を受けると抹消の血管は収縮し脳が酸素不足に陥るため、特に発育期の子供は運動機能の発達が遅れたり、記憶力の低下を招いて学習にも支障をきたすことが分かっています。歯肉の『シミ』は比較的に簡単に改善させられる場合もありますが、受動喫煙を受ける環境の改善がされないと何度も再発される可能性があります。
単なる『シミ』とあなどらず、子どもたちの生活環境を整えることを考えてみたいものです。