学校における歯の外傷
子どもの外傷は、発育段階、発生状況によってもさまざまです。過去10年間の推移を見ると、就学から高校までで歯の障害は全傷害の約20%ぐらいですが、受傷した時期や状況により程度が大きく違います。
例えば、未就学児であれば転倒、衝突で歯の脱臼(抜けかけること)を起こす男児が多く、小学生になると徐々に歯の破折(折れること)が増え、中学生、高校生になると圧倒的に破折の頻度が増えます。低年齢児であれば、教師などの管理下の下、大きな障害にはなりにくいですが、思春期を超えてくると授業中よりも課外活動時(いわゆるクラブ活動時)に事故は増えてきます。
歯の破折に限って運動内容別に集計すると、中学校では、1位バスケットボール、2位バレーボール、3位サッカー 、となっています。
中、高生の課外活動に対しても最近「スポーツ歯学」という学問が確立され、マウスガードの普及が多くみられるようになってきました。マウスガードを装着してクラブ活動できれば、歯の破折を激減させることが可能なので、さらなる普及が期待されます。
では、実際に歯の外傷が起きた時、どうすればいいのでしょうか?まず歯が抜けていない場合ですが、早急にかかりつけの医院で診察を受けるべきです。
もし抜けてしまったら、さらに緊急を擁します。早期であれば、元の位置に歯を戻せばちゃんと元通りにくっついて使える可能性が高いので歯科医院に急いでください(自分ではしないこと。歯科医院で正しい方法で元に戻して固定するなどしないといけません)。
かかりつけ歯科医院に行くまでの歯の保存方法ですが、受傷後すぐに牛乳に保存した場合は6~12時間以内であれば再植可能です。専用の再植用保存液(「ネオ」=ネオ製薬工業、電話0120-07-3768)であれば24時間、なければ応急的に自分の価値の中(唇と歯の間)に保管すれば数時間は保存可能です。いずれの場合もとにかく最短の時間で歯科医院を受診し、抜けた歯を再植してもらってください。早ければ早いほどもとに戻せる可能性は高くなります。
ただ、一度外傷を受けた歯は数カ月から数年後何らかの変化(神経が死んだり、根っこが吸収して無くなったり等)が現れる可能線があるので、かかりつけ歯科医院で定期的に診察していただくことが大事です。
永久歯の先天性の欠如
永久歯は親知らずを除くと全部で28本ありますが、生えてくるべき永久歯が生えてこないことを歯の先天性欠如といいます。これは何らかの理由で永久歯になるための歯の卵のようなものができなかったためで、本来あるべき永久歯がないがために、乳歯が長く残ったり、歯と歯の間にすき間が生じたりして、歯並びが悪くなることがあります。
公益社団法人日本小児歯科科学会の調査によると、先天性欠如は約10人中1人にみられ、その数は少しずつではありますが年々増加しています。
先天性欠如の原因は未だ明らかではなく、因果関係も明確ではありませんが、「遺伝」や「妊娠中の栄養欠如」、「全身疾患」、「薬物乱用や副作用」などが原因と考えられています。また、不要な歯が淘汰されつつあるという説もあります。
永久歯の先天性欠如の歯科治療方法は年代によって異なります。まず、小学生以下の場合は一般的には乳歯の抜歯は行わず経過観察を行い、あごの成長を誘導します。中学生以上になると全体的な矯正治療が可能になってくるので乳歯を抜歯して矯正器具を用いて歯並びを改善してすき間をカバーする治療をすることもあります。
また、20歳を過ぎると残っている乳歯は自然に抜けていくことが多く、矯正治療によるすき間の改善の他に、インプラント、入れ歯、ブリッジなどの併用による治療も選択肢となってきます。
歯の先天性欠如が認められた場合は将来的な計画が必要です。矯正治療をするのか、そのまま乳歯を使い続けるのかなど、しっかりとかかりつけの歯科医院でご相談ください。