院長ブログ

嚥下障害と健康寿命・高齢者のむし歯

 嚥下障害と健康寿命

皆さんは、食事の時などに飲み込みにくいことがありますか? 飲み込む動作がうまくできない状態を嚥下障害といいます。食べ物をうまく飲み込めないと食事が取りづらくなり、食べ物が喉に詰まって窒息するする危険が高まります。そのほか、高齢者の命を脅かす病気でもある誤嚥性肺炎を引き起こす原因にもなります。

嚥下障害の症状には、食事に時間がかかるようになり、また、食べる量が減る上、飲み込みやすいものばかり食べるため、低栄養状態になり、体調を崩し、体重減少につながっていきます。

嚥下障害の原因には、嚥下に関わる口腔内から胃までの器官の構造上の問題により、食べ物の通過を妨げ、うまく嚥下ができなくなる器質的原因と、器官の構造そのものには問題がなく、それらを動かす筋肉や神経に問題があって嚥下機能が衰える機能的原因、また、うつ病などによる食欲不振など、心因性の疾患が嚥下障害を引き起こす心理的原因が考えられています。

また、むし歯や歯周病、歯が抜けたまま放置している人も、将来嚥下障害やそれに伴う低栄養を起こす可能性が高く、健康寿命も短くなると考えられます。

皆さんも歯や口に特に自覚症状の無い時からかかりつけ歯科医と協力してお口の健康を保つように心がけ、それによって、いつまでも自分の口と健康な歯から栄養が取れるよう、ひいては健康寿命を延ばすようにしましょう。

高齢者のむし歯

高齢者に多いむし歯を「根面う蝕」(歯の根っこの面にできるむし歯)といいます。歯は歯ぐきより上の歯冠(エナメル質が覆う)と歯ぐきの中に埋まっている歯根でできています。加齢により歯ぐきが痩せ、高齢者になると若い時は歯ぐきに埋もれている歯根が出てきます。歯根は歯冠の7分の1の硬さにすぎません。つまり歯根の表面はとても柔らかいため、むし歯になりやすいのです。その歯根の表面にできやすいむし歯が根面う蝕です。

根面う蝕は歯の中にある神経に近い位置から始り、軟らかいために進行が速く神経に達しやすくなります。神経がむし歯のばい菌に侵されると、ひどい痛みが出るだけでなく、むし歯が急速に進み治療が難しくなります。また、歯根の表面全周に進行しやすいことから、歯が折れて根だけになり、抜かないといけなくなるケースも少なくありません。

若い時に比べて歯ぐきが痩せ、歯と歯のすき間が広くなり、汚れがたまりやすくなることもその原因の一つです。高齢者になると唾液の量が減る傾向にあります。唾液はむし歯予防には重要な役割をします。食べかすを洗い流し、また、むし歯になりかけた表面を再石灰化させ、むし歯になりにくくする力があるので、だ液の量、質は大変重要なポイントになります。唾液の減少は加齢によるもののですが、薬の副作用や漸進的な病気でも起こります。

根面う蝕はどうしたら予防できるのでしょう。誤った歯磨きにより歯周病が進み、歯ぐきが下がります。圧力がかかりすぎた歯みがきも歯ぐきを傷つけ、押し下げることとなります。適当な硬さと大きさの歯ブラシを使い、お口の中を常に清潔に保ってください。

フッ素入りの歯磨き剤やうがい薬の使用も効果が期待できます。唾液の量を増やすマッサージや運動もあります。不規則な生活や過労、過度のストレスにも気をつけてください。治療後の歯でも新たに根面う蝕になることが多いので、歯科医院での定期健診や各自に合ったお口の清掃指導を受けることをお勧めいたします。

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