歯科的個人識別
大阪府歯科医師会では、警察歯科対策推進室が中心となり大阪府警察本部からの要請により、大阪府内の身元不明のご遺体の歯など、口の中の状態を調べることによる身元確認のための検視活動を通じて、府警察本部鑑識課の捜査活動に協力し府民の皆様の安全と安心への貢献をさせていただいております。今回は、具体的な歯科所見による身元確認の方法について説明したいと思います。
まず、身元不明のご遺体の口の中の状態を肉眼で審査し、残っている歯の数、歯の磨り減り方、治療内容、歯並び、歯ぐきや歯がない部位の状態などを確認します。歯の治療内容にはいろいろな種類がありますが、詰め物には樹脂、セメント、鋳造した金属、アマルガムなどがあります。被せるものには、樹脂、金合金、銀合金、セラミックなどがありますが、歯の欠損を補うものとして、入れ歯、ブリッジ、インプラントなどがあります。このような歯の治療が、歯のどの部分にどの内容で処置がされているかが重要な資料となります。
次に、ご遺体の歯や顎のレントゲン写真を撮影し、レントゲン写真により、歯の神経が残っているか、または神経の処置を受けているのかが確認できますし、歯を支えている骨の状態や歯根周囲の骨の病気の有無等も診査します。これらの口の中の状態とレントゲン写真の所見をもとに、ご遺体のデンタルチャート(歯科所見)を作成します。
その後、この二つのデンタルチャートを照合して歯に施された治療のあとなどを異同識別する事によって同一人物かを鑑定致します。このようにして、府歯科医師会は府警本部鑑識課の身元不明のご遺体の身元確認の手助けをしています。
産業歯科医とは?
2011年8月に「歯科口腔保健の推進に関する法律」(歯科口腔保健法)という法律が施行されました。この法律は、全ての日本国民が生涯にわたって日常生活の中で自ら歯科疾患の予防に向けた取り組みを行い、定期的に歯科健診や歯科保健指導を受けることとしています。
歯科健診にはいくつかの種類があり、「1歳6カ月児歯科健診」・「3歳児歯科健診」・「妊娠歯科健診」・「成人歯科健診」「学校歯科健診」・「企業歯科健診」などがあります。大阪府では、これら全てを大阪府歯科医師会の会員の歯科医師会が行っており、歯科公衆衛生の普及活動に努めています。
企業では、労働安全衛生規則により、常時50人以上の労働者を従事させる事業現場において、歯や口腔にとって有害な環境が想定される業務(塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りん、その他、歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉じんを発散させる場所における業務)ら従事する労働者に対して、歯科健康診断などの健診管理を行うのが産業医師です。
事業者あるいは総括安全衛生管理者に必要な勧告も行います。雇用者(賃金労働者)の健康維持・推進を図り、雇用者を病気(職業性疾病)から保護することを目的としています。しかし、歯や口腔と全身の健康との関りが明確になりつつある近年では、其の他の業務に従事する労働者に対しても、定期的な歯科健診を行う事が求められています。
日本歯科医師会では2009年、「標準的な成人歯科健診プログラム・保健指導マニュアル」を作成し、従来の疾病発見型とは異なる支援型歯科健診の実施を勧めています。また、産業歯科医の知識や技術の向上のため、産業歯科医師研修会や産業医学講習会、労働衛生コンサルタント試験受験講習会等の研修会・講習会も実施しています。
大阪府歯科医師会では産業歯科対策推進室が設置されており、多くの事業所歯科健診を継続して実施することにより働く人々のお口の中の維持・推進に努めています。