歯が溶ける、すり減る?
『歯がすり減ったのか、下の奥歯に角があるようにかんじます。このままでよいのでしょうか?』このような質問を受けました。
歯は人の体の中で一番硬い組織ですが、さまざまな原因により、この硬組織が壊されることがあります。むし歯はむし歯菌によって産生される酸により、歯が溶かされ穴があいたり欠けたりしますが、むし歯以外の原因によっても歯の硬い組織が壊されることがあります。
- 酸蝕:以前は酸を扱う職場で、歯が溶かされるような症状(酸蝕症)が多くみられましたが、近年は過食症や拒食症で嘔吐により胃酸が口腔にまで逆流し歯の一部が溶けるということが起っています。また酸性の飲料を他院することによっても起こるといわれています。
- 摩耗:主に硬い歯ブラシで不適当な磨き方(強い横磨き等)を続けることにより、歯の根元が掘れていきます。
- 咬耗:長年噛むことにより歯を使っていると、誰でもある程度は歯が擦り減るということは起こりますが、歯ぎしりなどで、歯が過度にすり減ってしまうことがあります。
- アブフラクション:専門的な用語ですが、嚙み合わせが原因で歯に不適当な力が加わると、歯の根元に近い部分が三角形に破壊されることがあります。
これらむし歯以外の原因により歯の硬い組織が溶けたり、壊されたりすることを近年「トゥースウエア」と呼ぶことがあります。トゥースウエアは直接歯が失われる原因にはなりませんが、しみる、噛みにくい、歯の角が気になる、見た目が気になる、といったことが起ります。ご質問のケースはたぶん軽度の咬耗か摩耗であると考えられますが、原因も含めて調べるために、歯科を受診されることをお勧めします。
急なむし歯の進行?
62歳の女性の方よりご質問をいただきました。『もともと歯は丈夫な方で歯みがきもきちんとしているのに、最近、急にむし歯ができやすくなりました。なぜでしょうか?』
むし歯ができるのには歯みがきの良し悪しだけでなく、歯の質、だ液量、砂糖の摂取などの原因がかかわっています。むし歯はインフルエンザのようにある日を境に急に発症するような病気ではありません。けれども実際には、それまでむし歯もなく口腔清掃状態も良好であった患者様が定期健診にこれらて、突然歯が悪くなったということを目にすることがあります。多くの場合、何らかの健康上の問題や生活習慣の変化が生じています。
加齢によってもある程度だ液量は減少しますが、高血圧症や不眠症などの治療のために薬を継続して服用するようになると唾液分泌が少なくなり、むし歯菌ができやすくなることがよくあります。さらに、喉が渇いたり、声の具合が悪くなって飴や清涼飲料を頻繁に摂取するようになると、むし歯の発症が急に多くなります。仕事や家庭の状況が変わって生活のリズムに変化があっただけでもむし歯が急に増えることもしばしばです。禁煙のためいつも砂糖入りガムを噛んでいただめに、むし歯になったなどということもあります。
ご自身でも何か思い当たるところがあるかもしれません。以前と違う習慣が生活の中に入ってきませんでしたか、糖分を控えることは自分である程度できるでしょう。しかし、服薬内容を確認して唾液分泌抑制の少ない薬に変えてもらえるかお医者さんに尋ねたり、生活習慣のどこを改善すればむし歯になりにくくなるかなどはご自身での判断は難しいと思います。一度、かかりつけの歯科医院で相談されることをお勧めします。