口腔内は細菌だらけ
ヒトには700種類に及ぶ細菌などの微生物が住み着いています。中でも、口腔内には300種類以上の細菌が存在し、プラーク(歯垢)1ミリグラム中には1億個以上の細菌が存在するといわれています。
細菌が食事に含まれているしょ糖から合成する不溶性グルカンは、滑沢な歯の表面に強固に付着してプラーク(歯垢)を形成します。
そして細菌は自らが住みやすい環境を作り上げ、唾液や抗菌物質にも負けない細菌の集合体「バイオフィルム」となってどんどん増加します。
バイオフィルムとは、簡単に言うとキッチンの排水溝などについたヌルヌルした膜などがそうで、複数の細菌が重なり合った集合体です。
これらの細菌は食後1時間で1万倍にも増加していくのですが、睡眠後3時間で爆発的にその数が増えていき、約8時間では、細菌数は飽和状態に達します。起床直後の唾液1ccの細菌は、おおよそ糞便1グラムの10倍量にもなります。考えようによっては、体の入り口である口の方が、出口であるお尻より汚いとも言えます。
寝ている間は細菌の働きを抑えたり洗い流したりする唾液量が少なくなりますので、寝る前の歯磨きが一番大切で効果的です。ぜひ今日から実践してください。
最後に口腔細菌の家族感染にふれておきます。まだ歯の生えていない乳児では細菌は検出されませんが、乳臼歯が生え出してから生えそろうまでの生後19が月から31か月の期間に子供への初感染が集中します。
このことから、感染予防に神経質になりすぎ、親子のコミュニケーションをむやみにとがめてしまいがちです。
しかし、コミュニケーションを制限することよりも、母親をはじめとする家族全員が自分自身の口腔を清潔に保つことこそが子どもを守るということを理解することが大変に重要なことなのです。
歯が抜けたまま放置していると?
歯が抜けたまま放置していると大変なことになります。むし歯で歯に穴が開いているのに、痛みを我慢して歯科を受診せぬまま放置し、気かつけば知らない間に歯がなくなくっていた、というような場合は特に危険です。
勝手に歯が抜けてしまったと勘違いしてまはう患者さんもおられます。歯茎の上に歯がなくても骨の中にまだ根が残っている可能性があります。永久歯の根は乳歯のように自然に吸収しません。骨の中で残った根が化膿して、突然顔まで貼れる恐れもあります。
さらに放置すれば、周囲の骨をどんどん溶かして隣の歯の周りの骨まで失うことになります。急いで歯科を受診、レントゲンの検査で骨の中を調べてもらう必要があります。
抜けた部分の隣の歯も長期間放置すると徐々に抜けた部分を覆うように傾いてきます。かみ合っていた反対側の歯は伸びてきます。傾いたり、伸びた歯ではうまくかめません。
また空気も漏れるために話しづらくなります。正常な位置から歯がずれてくると、その部分の清掃が難しくなり、むし歯や歯周病が進行しやすくなります。かみ合わせのバランスも崩れ、顎が痛くなることもあります。
特に見えない奥歯は抜けても放置しがちです。1本ぐらいと考えて歯がなくなった場所を放っておくと周りの健康な歯まで病気になります。とにかく早急に歯科を受診することをお勧めします。はじめが大切です。