補綴って何?
「補綴」は歯科関係者には一般的な用語ですが、みなさんには聞きなれない言葉でしょう。歯科治療における補綴とは、歯が欠けたり、なくなった場合に冠(クラウン)や義歯などの人工物で本来の歯や歯並びの形に戻し、機能を回復させる治療のことをいいます。つまり一般的には、「差し歯」や「かぶせ」や「入れ歯」などと呼ばれる人工物を使うもので、みなさんにも非常になじみの深い歯科治療法です。古くは紀元前2000年~1000年のエトルリア人の墓地から発掘された入れ歯があります。日本でも奈良時代から入れ歯があったといわれていますので、昔から行われてきた治療法と言えます。
歯が欠けたり失われる主な原因はむし歯(う蝕症)、歯周病、けが(外傷)などです。いずれの場合もそのまま放置すると次第に歯が失われ、噛めなくなったり、しゃべりにくくなったりして、本来のお口の正常な働きが阻止されます。また、歯並びが悪くなったり歯の色が悪くなったりして、見栄え(審美性)にも影響します。歯の痛みを伴うことも少なくありません、
それらの影響は口の中だけにとどまらず、顎の関節や消化器官、他の全身の病気に及ぶこともあります。「歯がなくなったくらいで」と侮ることはできません。ですから、問題が生じたら、早めに補綴治療をすることが必要です。かかりつけの先生にご相談のうえ、適切な処置を受けていただくことをお勧めします。
補綴治療法
補綴方法には大きく分けて固定式と可撤式があります。固定式は土台となる歯の周囲を削ってその上に人工の冠を被せる方法です。セメントを使って取れないようにくっつけるので固定式といいます。「差し歯」や「かぶせ」がそれにあたります。また、歯が数本なくなった場合でも、両側に歯があればそれを土台にして抜けた部分に橋渡しをし、固定します。これをブリッジといいます。
一方、可撤式は出し入れする「入れ歯」のことで、歯の欠損に使います。。何本か歯が残っている場合は、「部分入れ歯」といい、入れ歯の維持・安定のため残った歯にバネ(クラスプ)をかけます。すべての歯がなくなった場合は「総入れ歯」といい、歯肉の上に載せて使います。
どの方法を採用するかは診査・診断のうえ提案し、患者さんと話し合って決定します。その際、よく患者さんから「どれくらい持ちますか?」と聞かれることがありますが、補綴した後も良い状態を長く保つためには歯のみならず、歯周組織が健全であることが前提となります。なぜなら、歯は歯周組織に支えられているため、歯周組織が炎症に破壊されると歯は支えを失い、ぐらぐらと動いてきます。
従って補綴する前には必ず歯石や歯垢を除去するなど(歯周治療)して歯周組織を良い状態にしておく必要があり、補綴後も良い状態を保つためにはメンテナンスが必要になります。