立春も過ぎ、温かくなるかと思いきや今日はまた、一段と冷えました。院長の泉田です。今日のテーマは「歯周病の予防①②、歯垢=バイオフィルムについて」です。
歯周病の予防①てごわい口腔細菌
国民の約8割に何らかの歯周病の症状が出ていると言われています。口の中の二大疾患は、う蝕(むし歯)と歯周病で、いずれも歯の表面に付着した細菌による感染症です。ですから、歯周病の予防は歯周病を引き起こす細菌をできるだけ取り除き、細菌の出す毒素を抑えこめる状態を保つことが大切です。予防の基本は歯磨きですが、実はそれだれで十分ではないのです。
歯と歯のすき間は複雑な形をしており、歯ブラシだけで細菌を全部除去するのは困難です。通常の歯ブラシで取り除ける最近は、全体の60%程度とされています。デンタルフロスや歯冠ブラシなどを通常の歯ブラシと併用すれば、確かに有効です。ただ、それでも完全ではなく、歯の表面には数%から10%の細菌が残ってしまうのが実情です。口の中の細菌は手ごわいのです。
そこで大切なことは、むし歯や歯周病の自覚症状がなくても、1年に2~3階は歯科医を受診すること。歯科医や歯科衛生士などの専門家に口の状態をチェックしてもらい、専門の器具と技術で徹底的に歯を掃除してもらいましょう。たとえ毎日、掃除機をかけている家でも、盆や暮などには大掃除をするのと同じです。掃除機(歯ブラシ)が届かず、汚れ(細菌、歯垢)が残ってしまった場所を根こそぎ掃除してもらいましょう。
歯周の予防に早道はありません。日々のケアと定期的な専門家のケアを受けることが大切です。
歯周病の予防② 就寝前の歯磨きが有効
歯周病は細菌により引き起こされますが、食生活、喫煙、飲酒といった生活習慣とも関係しています。そして歯の表面に付着して増殖する歯周病菌を取り除く歯磨きも、立派な生活習慣です。日本では以前、朝起きた時に直ぐ歯をブラッシングする習慣がありましたが口の中の細菌は食べ物を栄養源としますので、毎食後のブラッシングが良い習慣です。
昼間は食事をしたりして、口の中の環境はかなり変動し、細菌が定着しにくい状態にあります。これに対して眠っているいる夜は、環境はほぼ一定であり、だ液の分泌も昼間より少なく、歯周病にとっては居心地がよく、増殖しやすい状態といえます。このため歯周病を予防するには、就寝前に細菌を除去するためのブラッシングが効果的といえます。では、正しく歯を磨くには、どんなブラッシングが必要でしょうか。
歯周病の予防には、歯と歯肉(歯ぐき)の境目や、歯と歯のすき間に潜む細菌を取り除く必要があり、歯ブラシの毛先がその部位に当たらないといけません。その感触を確かめながら歯磨きをすれば、効果的に細菌を取り除くことができます。歯と歯のすき間には、デンタルフロスや歯間ブラシなどの併用も効果的です。
口の中の病気の大半は、鏡の前で大きく口を開いて見ることで、症状の有無や進行度が大まかに分かります。歯ぐきが赤くなったり腫れたりしていないか。歯と歯ぐきの際か目から出血していないか。歯磨きの前後に鏡を見て、歯や歯ぐきの状態をチェックする習慣も身に付けたいものです。また「磨いている」のと「磨けている」のには専門家からみると大きな差があります。
歯医者さんでの定期的なチェックとクリーニングで丈夫な歯と歯ぐきを保ち、快適な生活をエンジョイしましょう。
歯垢=バイオフィルム
むし歯も歯周病も歯垢(デンタルプラーク)が原因で起こる口の中の病気です。歯垢は細菌の塊ですが、単にたくさんの細菌が集まっているのではなく、粘着性のある膜で覆われているバイオフィルムという構造をもっています。
歯垢は、浮遊していた細菌が歯の表面に付着し次第に増えて形成されていきます。その過程で自ら産生した糖分(多糖体)の被膜内でさらに増殖、成熟していきます。この多糖体がバリアの役目をして、いわば細菌を守っているような構造がバイオフィルムです。
このため、バイオフィルムの中の細菌は白血球の攻撃も容易に受けません。さらに、抗菌剤のような薬もバイオフィルムの中まで浸透せず、効果を発揮することができません。ですから歯垢に対しては、抗菌剤、洗口剤だけでは効果がほとんどありまません。現在のところ、細菌バイオフィルムを除去するのに最も効果的なのは、ブラシなどで擦り取るなど機械的方法しかありません。
そこで、薬剤に頼るのではなく家庭でのブラッシングが重要になるのです。また、歯科専門家による、PMTCと呼ばれている歯面清掃も効果の高い方法です。一度、機械的手段で歯垢がある程度除去されたのちに抗菌剤や洗口剤などを使用すると、再び歯垢が形成されるのを防ぐ効果を発揮染ます。
「歯垢=バイオフィルム」ということを理解していただき、むし歯や歯周病の効果的な予防方法についても、歯科医院でご相談ください。