最近のむし歯治療
昨今の虫歯治療のお話しです。一昔前のむし歯治療といえば、むし歯になっているところはすべて取り除くことを前提とし、修復物を早期に脱落させが壊さないよう、いかに修復物を長持ちさせるかを重点に考え、むし歯菌により細菌感染されているエナメル質、象牙質の確実な除去、ならびに修復物の保持のために健全な部分をかなり削り取っていました。
現在ではむし歯でも初期状態で損失していないエナメル質及び象 牙質は治癒することが認められています。むし歯の進行についての解明が進むとともに、接着性修復材料の発達によってミニマルインターベンション(MI、最小限の侵襲による虫歯治療)が提唱されています。むし歯周辺の健全な歯質は極力削らず、歯科用修復剤を充填する治療方法です。加えて歯科診療所でのむし歯治療だけではコントロールできない部分も重要視されており、新たなむし歯菌の削減のみならず、感染予防や定期検診などの点も重要視されています。
また、タービンと呼ばれる高速回転切削器具に代わり、歯科用レーザーによるむし歯治療が可能となりました。これは、回転切削器具と比べて不快な音や振動が少ないことが大きな特徴です。適用症例は限られますが、今までこの不快音などで歯科診療所に行きにくかった方には朗報です。
いずれにしろ、自分にあった、かかりつけ歯科医を探し、まずは歯科検診を受け、MI治療を行い、その後は定期的な検診とフッ素などを利用したむし歯予防を継続的にされることをお勧めします。
むし歯治療に使われる素材
むし歯を治すために歯科医はいろいろな素材を使います。大きく分けると金属、プラスチック、そしてセラミックの三種類の素材です。
今では、金属で歯を治した場合は見栄えが悪いと感じる患者さんも少なくありませんが、一般的なのはやはり金属を用いた治療です。その理由は金属が最も強くて耐久性があるからです。
その一方で、プラスチックは自動車部品にも使われるほど強くなったので、前歯を治療するときには見栄えを優先させて使用されることもあります。しかし、歯は日々、体重に近い重量を受け止め、さらにいろいろな飲食物と接するのでプラスチックで治療した歯は、すり減ったり、着色したりすることがあります。
では、セラミックはどうでしょう?セラミックは衝撃に弱いイメージも解消されつつあり、金属よりも硬く、着色もほとんどしないので患者さんにも人気の材料です。しかし、セラミックは金属と比べると衝撃に弱く割れやすく、また加工が困難であるという性質があります。つまり、統合的に見るとプラスチックもセラミックも金属にかなわない部分が多いのです。
実際、私たちの周囲を見回してみると、電車の線路や車輪、高速道路の橋げたをささえるボルトなど、長い間、暑い日も寒い日も風雨にさらされ、常に大きな力が加わる場所には「例外」なく金属が使われています。しかし、金属には見栄えの悪さや金属アレルギーを起こす可能性がある等の欠点もあります。
そこでこの欠点をカバーする方法として、金属の上にセラミックを焼き付けたり、プラスチックで金属を覆い隠したりといった工夫がなされ、その結果見栄えもよくなってきました。さらに、プラスチックにセラミックの粉末を混ぜることにより、すり減りにくく、着色も少ない材料が開発されました。このように歯科の世界では、金属を使わないむし歯治療という並外れた「例外」を目指して日々進化しているのです。