昔々治療したはずの歯が急に痛み出したり、昔、神経を抜いて治療して被せた歯に痛みが出てきたり、強く噛んだら違和感が残っていたり、など治療した歯が再発を繰り返したことはありませんか?
以前、10〜20年前までは、虫歯が深くなれば神経を抜くのがごく普通に行われていた治療でした。
それが今になり、再発してきたわけです。ではなぜそうなってきたのでしょうか? 理由の一つとしてあげられるのは、その当時、全ての歯科治療は肉眼で行われてきたからです。
今のような歯科顕微鏡はその当時まだ開発されておらず、肉眼と術者の感によってなされてきたのです。 この歯科用顕微鏡のことを「マイクロスコープ」といいます。
実は、この私、泉田尚宏も右下7番の歯を失いました。学生時代の虫歯が原因で、神経を取る羽目になり、神経をとってから10年後、歯にヒビが入り、そこから感染し、歯を抜くハメになりました。
もし、その時代にマイクロスコープがあれば、私の右下7番の歯は助かったのではないかと思えるのです。残念でなりません。
マイクロスコープとは、顕微鏡のことであり、医療の分野に取り入れられたのは、耳鼻科が最初で、1953年のことでした。この時、カールツァイスという会社で、世界初の手術用顕微鏡(OPMI1)が開発されました。
その後、1960年代より、眼科、脳神経外科、心臓外科など、医療全般で使われるようになりました。
歯科界に導入されたのは、1992年で、アメリカのペンシルベニア大学のSyngcuk KIM教授のもと、歯内療法(根管治療)分野で始められました。
現在では、歯周治療、審美修復治療、歯周外科、インプラント治療など幅広く用いられるようになりました。アメリカにおいては、根管治療の専門医は、マイクロスコープの使用が必須となっています。
マイクロスコープを使えば、肉眼で見るよりも20倍程度まで拡大させることができるので、より精密な治療を行うことができます。歯に入っている細かいヒビ、色の変化、形を見ることができ、またそれらを写真にして保存することもできるのです。
マイクロスコープを導入している歯科医院は、日本では全体の5%にすぎません。原因は、マイクロスコープが非常に高価な器械であるということです。しかしながら、アメリカでの情報は、日本でも広がってきて、マイクロスコープによる治療を希望する方が、非常に増えてきています。どうせ治療するなら、より精密にやってほしいという方が増えてきているのです。
虫歯が深く進行し、歯の神経近くまでになった時、以前は抜髄といって神経を取る治療が主流でした。もしくは、神経を残す場合は、水酸化カルシウムが用いられていました。
ところが、1993年、Torabinejad先生がMTAセメント(正式名称:Mineral Trioxide Aggregate)を開発しました。
水酸化カルシウムを凌ぐ、より画期的なお薬で、神経を残すことが可能になりました。
このお薬を使うには、神経に直接塗るため、マイクロスコープを使い、高い確率で歯の神経を残すことができるようになりました。
マイクロスコープによる治療は、通常1時間〜2時間かかります。したがって、多くの方を一度に治すことができないのです。もし、マイクロスコープを使った治療を望まれるなら、できるだけ早く治療予約をお取りください。
あなたは、死ぬまで、年老いても自分の歯で美味しい食事を家族の皆様と一緒に食べたいと思いませんか?
もちろん、インプラントや義歯でも可能かもしれません。しかし、インプラントは保険が効かず、費用がかかります。
義歯は、安くできますが、咀嚼能率(噛む力)はご自身の歯の3分の1にしかすぎません。
それよりも、自分の歯であれば今まで通り、好きなものを思いっきり食べることができるんですよ 素晴らしいと思いませんか?
マイクロスコープによる治療は、あなたのそういった願いを叶えてくれる夢の器機なのです。
そしていつまでも命のある限り、ご家族や仲の良い友人の皆さんとお食事を楽しんでください。それが、我々歯科医療従事者の使命であり、目標であり、生きがいなのであります。
泉田歯科医院 泉田尚宏