院長ブログ

味覚障害・摂食嚥下障害・食事中の摂食嚥下障害

今年もよろしくお願いいたします。1月に入りもう20日です。守口市 泉田歯科医院 歯科医師 院長の泉田です。今日のテーマは「味覚障害・摂食嚥下障害・食事中の摂食嚥下障害」です。ご参考になれば幸いです。

味覚障害

最近食事がおいしくない、なにか変な味がしますが歯を磨けばよくなるのでしょうか?

美味しく食事が摂れるということは、人生の大きな楽しみの一つですが、さまざまな原因で味覚に異常が起こることがあります。味わいとは、食物中の味性分がだ液にとけと舌の表面にある味蕾(みらい)という細胞を刺激することで感じる感覚ですから、頭頚部の放射線療法などの後遺症として味蕾そのものが破壊された場合、味覚を感じることはできなくなります。

また味蕾からの感覚刺激を脳に伝える神経系統が損なわれた場合や(顔面神経麻痺など)、脳腫瘍などで味覚中枢が障害されたときにも味覚異常が起こります。しかしこれらの発現頻度は低く、元になる病気がありますので、なんとなく味が変な気がするというケースとは違います。

味を感じるにはまず食物の味成分がだ液に溶け出す必要がありますので、だ液の分泌が不十分な場合(ドライマウス)、苦く感じたり味覚異常を起こしたりします。またお薬の副作用で口が渇くことがありますし、味覚そのものに異常を起こす薬剤も多数存在します。正常な味覚を保つ上で、必須微量元素の一つである亜鉛が不可欠です。普通の食事をしていれば亜鉛が不足することはありませんが、お薬の中には亜鉛の働きを弱めるものもあり、服薬中の方はお医者さんに相談してみてください。舌が舌苔で覆われていたり、カンジダというカビの一種が起こすカンジダ症に罹っていたりすると、味成分が味蕾まで届きませんので味覚が障害されます。汗ばむ時期にともすれば水分が不足しがちになり口が渇きます。十分に水分を補給し、口を清潔に保つよう心がけてください。

摂食嚥下障害

年を取ると、食事中によくむせるようになりますが、むせはなぜ生じるのでしょうか。またむせを防ぐ方法はあるのでしょうか。

私たちが食べるということは、簡単に見えてとても複雑な過程からなりたっています。まず食べ物を見てそれが食べ物であると認識することから始まります。続いて食べ物を口の中に取り入れ、舌と歯を使ってだ液と混ぜられて咀嚼されます。こうしてばらばらにされた食べ物は一つにまとめられて食塊となり、舌の運動によって口の奥へと送られます。食塊が咽頭に入ると嚥下反射が起こり、咽頭を通過して食道に入ります。食道の筋肉の働きで食塊は逆流しないように胃へ運ばれます。

口腔の機能が低下して接触嚥下の運動がスムーズに行われなくなると、食塊の一部が気道に誤って流れてしまう誤嚥が生じるようになります。肺への通り道である気道に食べ物が入ろうとするのを押し出そうとする反射がむせです。誤嚥は加齢により増加する傾向がありますが、脳血管障害、パーキンソン病、喫煙者、慢性呼吸器疾患のある患者さんに特に多くみられます。また誤嚥によって肺へ入った細菌は恐ろしい肺炎の原因となることも知られています。

健康な人でも誤嚥は起こることですし、むせは正常な反射なので完全に予防することはできません。そこで大切になってくるのが、日々の食事でしっかり噛んで、食べる習慣を身につけることです。これは脳への刺激となり、誤嚥を引き起こす筋力の低下を防ぐといわれています。さらに咀嚼や味覚の能力を低下させないためにしっかりと口腔内ケアを行う必要もあります。摂食嚥下機能が低下して誤嚥を起こしやすくなった方でも、食事前の準備運動、食事の姿勢、食物の硬さ、性状の工夫などにより、かなり誤嚥は防げることが分かってきました。食事中のむせが気になる方は、一度かかりつけの歯科医院で相談されることをお勧めします。

食事中の摂食嚥下障害

食事中にむせることが多くて困っています。むせる原因としてはいろいろありますが、まず最初に気をつけてあげてほしいことは、食事中の姿勢です。摂食嚥下機能訓練時の基本姿勢は「端坐位・足底接地・軽くうなずく姿勢」で、足底が床にしっかりついていなければなりません。イスに座った姿勢が基本で、座りごたつに足を投げ出したり、あぐらをかいた姿は不適当です。

次に端座位ですが、これはイスの背もたれに身体をあずける姿勢ではなく、こころもち浅く座って背中を開放し、背筋を伸ばす姿勢です。この時体幹がまっすぐになっているかどうかをご自分で確かめるためには、前に鏡があると便利です。この姿勢をとると楽に深呼吸ができますので、安全な呼吸路が確保できます。また軽くうなずく姿勢をとると、嚥下時に気管孔を閉鎖しやすくなるので、誤嚥を防げます。背もたれに寄りかかり、足を投げ出した姿勢では、横隔膜が胸を圧迫して深い呼吸ができず、誤嚥しやすくなります。「端座位・足底接地・軽くうなずく姿勢」の3点セットが守らめているかをまず確認してください。

もう一つの原因として、一口量と食物を口に運ぶリズムがあります。お元気だったころに「早食い」だった方にはこの傾向が顕著にみられます。「一度に多量の食物をほおばり、まだ飲み込みもできていないのに、次から次へと食物を口に運ぶ」という状況では、むせて当然でしょう。長年の癖ですから、簡単にはなおらないかもしれませんが、正しい姿勢をとり、適切な一口量とリズムを守ることで、かなりの改善がみられるものです。

食事中のむせはかなりつらいもので、体力の消耗が激しく、食事への意欲が失せてしまいます。むせの原因をつきとめて、楽しく安全な食生活を確保してあげてください。

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