院長ブログ

抗血栓療法を受けている患者の抜歯

高齢社会となり、歯科診療にも基礎疾患を有した患者さんの占める割合が増加してきました。そのなかで抗血栓療法を受けている患者さんも多く、観血的処置(抜歯など)に対して、より慎重な対応が必要になってきております。

以前、抗凝固薬であるワルファリンや抗血小板薬のアスピリンなどを服用されている患者さんは、観血的処置に際して、術中、術後の出血が懸念されるために同薬剤の中断により血栓・塞栓症を誘発する危険性が問題視されております。

抜歯にあたり、ワルファリンを中断すると約1%に重篤な脳梗塞を発症し、死亡例の報告もあります。また、脳梗塞の再発予防のため服用しているアスピリンを中断すると、脳梗塞の発症率は3.4倍になるとされています。よって同薬剤は中断することなしに抜歯することが望ましいとされております。

しかし、未だに医師と歯科医師の間で統一見解がなく、各施設での対応が異なり、なかには服薬を中断して抜歯する場合もあるようです。また、抜歯時には同薬剤を中断すると認識している患者さんも多く、勝手に服薬を中断している場合もあり、問題となっています。

よって、今回、歯科領域において日本人に適したエビデンスに基づくガイドラインが作成されました。ガイドラインでは血液凝固脳検査のTP-INR(Prothrombin Time-international Normallized Raito:プロトロンビン時間の国際比、以下PT-INR)値が2.0~3.0の治療域に安定している場合にはワルファリンは継続したまま簡単な抜歯を施行しても重篤な出血性合併症は少ないため、十分に局所止血処置を行うことができるなら中断する必要はないとしております。

ただし、埋伏歯が歯肉を切開し骨を削除するような難しい抜歯に関しては、より慎重な対応が必要となります。また、大出血が予測される手術で、さらに血栓の危険が高く中断できない場合には、同薬剤を中断してヘパリンという抗凝固剤に切り替える(ブリッジング療法)必要があります。なおPT-INRは変動するので、少なくとも72時間前の値を参考にするのが望ましいとされています。

このように抗血栓療法を受けておられる患者さんは、医師と歯科医師との緊密な県警が必要ですので、歯科医には、現在の病状・投薬内容などを知らせること、そして主治医とよくそうだんして指示に従い、絶対に自己判断で薬剤を中断しないようにしてください。

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